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外来生物を飼うということ

2009年11月3日

 ペットといわれて思い浮かぶのは犬や猫などの哺乳(ほにゅう)類か、せいぜい鳥類だろう。あるいは熱帯魚など観賞用の魚類や昆虫類も、ある人にとってはペットかもしれない。

 よその国や地域に生息するさまざまな外来生物を専門に扱う店では、客に対して飼育上の注意点などを熱心に説明している。それを傍らで聞いていると、なんだか簡単そうに思えなくもない。でも、やはり私は不安に感じることのほうが多い。その生き物の生理生態について分かっているのか? 適した環境を自宅で整えることができるのか? ケガや病気のとき、正しい診察ができる知識と技術と経験を持った獣医師はいるのだろうか?

 そんな心配をせずに、外来生物を気軽に購入してゆく人がいる。責任を持って最後まで飼ってくれればまだいいが、中には逃がしたり、世話がしきれずに手放したりする人がいる。「自然に返す」などと言い訳をつけて、野山や川などに放してしまうのだ。そのほとんどは間もなく命を落とすが、ごく一握りが環境に適応して生き延び、繁殖することがある。

 そうなると日本の生態系は非常に深刻な悪影響を受ける。外来生物が元々そこにいた在来生物、または在来生物の餌になるものを食べてしまうのだ。結果として、在来生物が絶滅の危機に瀕(ひん)することがある。外来生物と在来生物の交雑種が生まれることも問題視されてきた。外来生物による農作物被害、人的被害、感染症の媒介といったケースもある。そうして最も安直な対策として多くの場合、外来生物は駆除される。

 元々、彼らは好んで異国にやって来たのではない。捕獲されて慣れない土地に連れて来られ、ペットとして販売されたのだ。揚げ句の果てに捨てられ、必死に生き延びたら駆除である。その前に水際対策を整えたい。

 日本は野生動物の輸入大国だ。「珍しいから」「他の人が飼っていないから」といって欲しがる気持ちがどれだけの生命を苦しめ、絶滅に向かわせ、そして自然環境を混乱させているかを考えるべきだろう。一頭の外来生物の陰に横たわる無数の犠牲を、どうか想像してみてほしい。滅び去った種はもう二度と戻らないのだ。(作家)
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