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「しつけ」に悪戦苦闘する前に

2010年1月12日

 ペットを愛する飼い主も、犬や猫たちの行動に悩まされることがある。そんなとき救いになるのが、動物行動学の専門家による適切なアドバイスだ。日本獣医生命科学大学講師である水越美奈獣医師の下には、しつけインストラクターや獣医師から紹介を受けた飼い主が訪れる。

 そうした臨床の現場で先生が最初に確認するのは「動物のニーズが満たされているか」ということ。問題の行動そのものを修正しても、ニーズが満たされなければ逆戻りしてしまうからだ。ニーズとは痛みや不快や不安など感じず、快適に過ごすことを指す。

 犬や猫の問題行動と呼ばれるたぐいのほとんどは、不安からくると先生は考えている。たとえば猫のマーキングの根本的な原因もそうだ。発情していても交配できない、テリトリーを監視したいのにできないのは、猫にとって大きな不安要素になる。それを取り除く最も効果的な方法は不妊去勢手術だ。その上で、高いところから見下ろせる場所を数カ所と、隠れるスペースを設置するといった環境整備により、猫は穏やかに暮らせる。

 犬の場合も、吠(ほ)えるのは動物として正常な行動であるという説明に、はっとさせられる飼い主は少なくないだろう。それが「たまたま」人間社会では望ましくないことで、彼らはそうと知らないし、望ましい行動が何かもわからない。わからないということ自体が不安の原因になり、それが混乱や葛藤(かっとう)を引き起こした結果、咬(か)むといった問題行動につながる。そして、そんな彼らの飼い主も混乱し、葛藤している。

 家族の一員であるペットを、私たちはつい人間の常識に当てはめて考えがちだ。しかし動物の行動には理由がある。それが理解されず、頭ごなしに叱(しか)られたり体罰を受けたりするだけのペットが、いかに多いだろう。ちなみに体罰は虐待へとエスカレートしやすく、正解を教えられない。つまり、いいことはひとつもない。一方的な「しつけ」に悪戦苦闘する前に、彼らの行動の理由や意味を学びたいものだ。

 「人と動物の、お互いの間で絡まった糸をほぐしてあげるのが私の仕事だと思っています」という水越先生は、もの言わぬ動物たちの声を日々代弁している。(作家)
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