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見えない敵と闘う

2010年1月26日

 飼い主から持ち込まれた犬猫を保護・収容する行政施設。訪問するにはそれ相応の覚悟を要するその場所へ、ボランティアは定期的に通っている。

 動物にまつわる諸問題を知り、何かしたいと考えた扇田桂代さんと吉田美枝子さんは多頭飼育現場の手伝いに出向いた。その犬たちと飼い主のことで千葉県動物愛護センターとのかかわりができ、動物保護団体「ちばわん」として施設の犬に新しい家庭を探す活動が始まる。

 この日も彼女たちはセンターの動物収容棟入り口で使い捨ての作業着をまとい、手袋をはめ、訪問者用の白い長靴を履いて扉を開いた。足を踏み入れると、犬たちの視線が一斉に集まる。通路をはさんだ右側に隔離室、左には五つに仕切られた収容房が並ぶ。その先が殺処分機、そして焼却炉と続く。

 動物のにおいと喧噪(けんそう)の中、検疫を依頼していた6頭の犬に首輪とハーネスを着け、移動用クレートに移して車に積んだ。その後は職員と相談しながら翌週以降に引き出す犬を選び、事務的な作業をこなす。終始一貫して、淡々と。

 その間も、選ばれなかった犬たちが彼女らを見つめている。隣の部屋には生後数日の幼い犬が寒さと空腹に震えている。すべてを助けたいが、それはかなわない。世話に手間がかかる乳飲み子の受け入れ先を見つけるのは難しいし、センターの門をくぐった犬は感染症に罹患(りかん)している可能性が高く、検疫期間に命を落とすことも少なくない。

 センターで肌に感じるのは、見えない敵の存在だ。ペットを安易に殖やしたり捨てたり、また自分の犬が迷子になっても捜さない、ごく普通の「動物が好きな人たち」が、殺処分される犬をつくるという現実と闘っているのである。「日本全体が変わってゆくための、ほんの少しの部分でも担いたい」と言う彼女たちが、命の選択を強いられるつらさは計り知れない。感情的になっている余裕などないほどに。

 この日、保護した犬の預かり宅には、ここから巣立った犬たちの幸せそうな写真が何枚も飾られていた。しかしその後ろには、救われなかった幾多の命がいる。この家で家族との縁を待つ一頭が、きらめく瞳で私を見上げた。抱きしめずにいられなかった。(作家)
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| しっぽの気持ち | 14:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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