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[書籍] 動物たちの反乱 増えすぎるシカ、人里へ出るクマ



 わたしたちはいつのまにか、気配に対してやや鈍感になっていやしないだろうか。見えなくても何かがいる気配、見られている気配。それは危機を察知するためだけではなく、日常の中で感じる生き物との楽しい交流でもある。

 本書のタイトル「動物たちの反乱」とは、生存に対する「無法な圧力」に対し、やむをえず反抗することであり、動物たちにそうさせた理由について河合雅雄さんは「(一)里山の崩壊、(二)動物の数が増えた、(三)農村の構造的変化、(四)野生動物の保護管理行政の貧困」と書いている。その四つは密接に関係しあっているが、いちばん大きな原因は里山の崩壊である、と。

 遠くから眺めていると気づかないが、日もささず、倒木だらけの山を多く見かけるたびに、ため息が出る。

 人里の近くにある低い山は、農家にとって田畑と同じ価値を持った土地であり、「山」とか「裏山」と呼んで、薪や山の幸を採るなどさまざまに利用してきたのだ。

 林学ではこの低山を「農用地」と名づけているが、いかにも硬い感じがするということで、林学者の四手井綱英(しでい・つなひで)が「里山」と呼ぶと、それが詩的な響きを持つ言葉だったことから急速に普及したという。

 しかし、昭和30年代後半に燃料革命が起こり、薪、炭、石炭に代わって石油、ガス、電気が利用され始めると、里山は一挙に薪炭林の役割を剝奪(はくだつ)され、遊休地化してしまった。

 田畑への肥料の供給源であった堆肥(たいひ)も化学肥料となって、人が耕地にいるのは農繁期だけ。農業を人力で行っていた時代は、年中誰かが田畑にいたので、山の動物も警戒して里へ出ることはなかった。しかし、今日では里へ出ても追い払われることが少なくなり、里は餌場のひとつになってしまったのだという。

 もちろんこれも、理由のひとつだけれど、私たちはもともと野生動物と共に暮らしていることを、つい忘れてしまっているのではないのだろうか。

 地球規模でみて、特別に生物多様性が高く、かつそれが破壊の危機に瀕(ひん)している地域を「生物多様性ホットスポット」という。そんな場所は、地球の陸地面積のわずか2・3%しかない。そのひとつが日本列島だ。狭い国土に23科59属105種もの野生哺乳類が生息している日本の森林こそ、まさに野生動物の宝庫なのだ!!

 こんなに大切な彼らの棲(す)む家を荒らし放題にしておくというのは何事かと、つい言いたくなる。

 「明治に入って、日本は西洋諸国に追いつくために、あらゆる面で近代化に必死の努力を傾注した。文明開化を合言葉にして、驚異的な発展を遂げていった。そのために、惜しげもなく過去の習慣や美風の多くを捨ててしまった」

 明治6年に来日し『日本事物誌』を著したバジル・チェンバレンは、その中で「一般的に言って、教養ある日本人は彼らの過去を捨ててしまっている。彼らは過去の日本人とは別の人間、別のものになろうとしている」「古い日本は死んだ」とさえ言い切っている。しかし彼は、日本人は過去を捨てたつもりでも基本的な性格は少しも変わらず、新しい水路に偏っていっただけだとして、捨てた過去よりも残した過去のほうがはるかに大きいと、その後の復元力に期待をかけていた。

 幕末から明治初期に訪れた欧米人は、野生動物の豊かさと日本人の動物に対するやさしい態度に感嘆する。北海道開拓使として招かれたエドウィン・ダンは「芝、上野、東京中の草むらに雉(キジ)がおり、英国大使館前の濠(ほり)にはガンやカモなどの水鳥が真黒になるほどいた。雄狐(ギツネ)の鳴き声がしきりにし、狸(タヌキ)もいる。朝、食堂のテーブルの上に雄狐がおり、バター皿の中身を食べていた」と記し、野生の鳥や獣が人間と共存している状況に心を動かされている。当時、東京は世界でも有数の大都市だったが、欧米の都市でこのように「動物の幸う所」はなかったそうだ。

 タイムマシンがあれば、その時代の東京に行ってみたい。が、それとてつい最近のことなのに……。

 クマやシカやサルが出没したというニュースを、「また、出たか」で終わらせるのではなく、その続きを本書で掘り下げてみてほしい。
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