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変わる殺処分の現場

2010年9月23日

 今から11年前、動物保護収容センターへの取材を断られ続けた末に何とか実現しても、稼働しないガス処分機の見学すら許されなかった。私が「殺処分」と言うたびに「安楽死処分」と訂正されて、目の前の壁の大きさを思った。

 ほどなく法律が改正され、時の流れと共に動物関連の問題にかかわる人々と活動内容も変化した。私は幾つかのセンターで殺処分の工程を見ることがかない、昨年は書籍用の撮影を許可された。そのときの職員の言葉が忘れられない。「あなたを信用して取材を受けるのだから、使用する写真も原稿もチェックしない。我々が殺してきた何万頭もの命のことを、見て感じたまま伝えてほしい」

 現在は自治体職員の中にも「殺処分」という単語を使う人がいるし、資料にもそう記されることがある。一部とはいえ取材にオープンな自治体があり、雑誌やテレビで殺処分の実態を目にする機会が増えた。しかし施設の名前が伏せられる理由は非難の声がセンターや職員に集中して通常業務に支障をきたすケースが多いからだ。真に責められるべきは、そこにペットを送る飼い主や繁殖販売の構図だというのに。

 そんな中、月刊誌「北方ジャーナル」の取材を受けた札幌市動物管理センターは殺処分全容の撮影、公開と、自らの名前が出ることを了承した。動画投稿サイトで誰もが見られる5分半の映像は、2頭の犬が処分機の中で絶命するまでを克明に映し出している。

 これを見たとき、処分機のきれいさと犬の数は撮影用に配慮されているのだろうと思った。だが記者が取材申し込みなく初めて訪れた際も処分機はぴかぴかで、衛生管理の良さは地元ボランティアの間でも有名だという。また同センターでの犬の殺処分数は09年度に117頭だから、平均すれば日に2頭ほどだ。

 あふれるほどの絶望を抱えてセンターをあとにした夏の日から11年。その間、数々の現場で生き物の不幸を目撃し、救うため必死な職員とボランティアに会い、物事が少しずつ動いていることを実感してきた。今回の札幌市動物管理センターの姿勢は私たちが正しい方向に向かって進んでいることを改めて教えてくれる。(作家)

=次回は10月26日掲載
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