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[報道] 年20万匹が殺処分…高齢者の“家族”ペットが社会問題化?

 高齢化と核家族化が進み、日本には高齢者のみの世帯が増加している。それに伴い、一人暮らしの高齢者が家族としてペットを迎え入れ、心の糧にするケースも増え続けている。

 けれども、飼い主が孤独死したり、入院したりすることによって、ペットが取り残される悲劇が、いま問題視され始めているのだ。

●飼い主の死体とアパートに……

 動物病院に収容されたミニチュアダックスのミミ(3歳、メス)。

 病室にスタッフが入ってくると、ミミはケージの奥に逃げ込んで丸まってしまう。病院に収容されて1カ月。食事は自力で摂取できるようになったが、今もまだ夜鳴き、怯えなど、心に負った傷は癒える気配がない。

 ミミにはほかの入院動物と違って、帰る家がない。健康が回復しても、迎えに来てくれる飼い主もいない。ミミが無料で入院していられるのは、動物病院のボランティア精神の賜物なのだ。

 ミミはかつて80代の一人暮らしの女性に飼われていた。けれどもその女性は、ミミを残して孤独死してしまったのだ。

 異変に気づいたのは、飼い主の「犬友」の昌子さん(60代)だった。

 ミミと飼い主の住むアパートの郵便受けにためられてゆく新聞。気温が25度を超えた日でも開けられない窓。散歩の時間になっても、ミミとその飼い主が外に出てくる様子はない。

「おせっかいだと、ひんしゅくを買ってもいい」

 昌子さんは大家を説得して、ミミのいる部屋の鍵を開けてもらった。そして、そこで昌子さんたちが見たのは、腐敗しかけた飼い主の遺体と、衰弱して立ち上がれなくなったミミの姿だった。

 飼い主の死後、ミミはゴミ袋の中のラップやティッシュ、アルミホイルなどを食べてしばらくは飢えをしのいでいたらしい。やがて口に入るものも、飲む水もなくなり、衰弱して鳴くことも動くこともできなくなったミミは、腐敗していく飼い主とともに死を迎える直前に保護されて、動物病院に収容されたのだ。

●認知症で病気を認識できない

 都内に住む会社員の克彦さん(30代)は、雪の降る日、地面をかきむしって苦しみながら血尿する猫の姿を見た。その猫は、克彦さんが時々エサを与えていた「顔見知り」の猫だった。

 猫を病院に連れて行こうとする克彦さんに対して「うちの飼い猫を誘拐するつもりか!」と怒鳴りつけてきたのは、近所で一人暮らしをする90代の男性だった。

 男性を説得して猫を病院に連れて行ったところ、診断は「重度の膀胱炎と尿道炎」。投薬治療で治るものの、冷えは厳禁。室内で暖かくしていなければ完治は見込めない。

 けれども、翌日も、翌々日も猫は外に出され、鳴きながら地面をかきむしり続けていた。季節は冬。夜になれば0度近くまで冷え込み、雪のちらつく時期だ。

 飼い主に、「家の中で暖かくしておくようにって、お医者さんが言ったでしょう?」と言っても、認知症を患っているらしい男性は「うちの猫は元気ですよ。今まで病院にかかったことなんか一度もないから」と、ほんの2日前の出来事すら記憶にとどめていない様子。

 このままでは、まともな治療は望めない。そう判断した克彦さんは、こっそりと猫を保護して別の動物病院に連れ込み、「チー助」と名付けて自宅で飼うことにした。

●高齢者がペットを飼うことの問題

 克彦さんはその時を思い出して、次のように語る。

「僕は、一人暮らしのお年寄りからペットを奪ったんです。良心の呵責は半端ないです。つらかったです。でも、あのままだとチー助は苦しみながら死ぬしかなかった。あれから半年以上。チー助の病気は治ったけど、排尿に障害が残りました。おじいさんの心の満足を優先するか、動物の健康を優先するか……。この先、こんな問題があちこちに出てくるような気がするんです」

 ミミやチー助のケースは、高齢化社会とペットブームが重なり、起こるべくして起こった事故かもしれない。

 いや、ミミもチー助も、助けられただけ幸運だ。救いの手を差し伸べられず、悲劇的な最期を迎えるペットは、決して少なくはないのだから。

 東京都内で動物保護団体を主宰する女性は、こう語る。

「高齢者が動物を飼い、結局は世話ができなくなるというケースは珍しくありません。飼い主が亡くなった後、遺族がペットを保健所に連れ込むことだってあるんです。ですから、犬や猫の寿命を考え、うちでは一人暮らしの55歳以上の人には動物を譲っていないのです」

 けれども、独居高齢者がペットを飼うのが全否定されているわけでもないようだ。前述の保護団体のサポートスタッフは、次のように語っていた。

「いちがいに独り暮らしの高齢者のペット飼育を敬遠してるわけじゃないんですよ。高齢者が動物と暮らすことで元気になるケースって、たくさんありますから」

「家族のいないお年寄りが動物と暮らせたら、と思います。特に猫や高齢の犬は、静かで穏やかなお年寄りと相性が良いんです。ただ、飼い主にもしもの事態があった時の受け皿がないのが問題なんです」

●高齢者と動物のためのバックアップがない社会

 アニマルセラピーという言葉があるように、動物による癒やし効果は多くの人々が認める。

 犬や猫などの動物を撫でることで血圧が低下したり、心臓病の進行を遅れさせたりできるといわれているし、ペットを飼っているとリラックス効果によって中性脂肪やコレステロール、血圧などの値が下がることも知られている。また、動物を飼っている高齢者はそうでない高齢者に比べて、通院回数が少ないというデータもある。

 日本で殺処分される犬や猫は年間20万匹以上。今後、増え続けるであろう高齢者が、家族の一員としてこういった動物を迎え入れられれば、高齢者にとっても動物にとっても、少しは暮らしやすい社会になるのではないか?

 動物を飼う一人暮らしの高齢者を定期的に訪問し、飼い方の指導などを行っている動物愛護推進委員の和代さん(50代)は、この件について次のように語った。

「一人暮らしのお年寄りが動物を飼うためには、それなりのバックアップが必要です。核家族化が進む今、家族や親戚の助けは当てにならないケースがほとんどです。かといって、行政がそこまでサポートできるかというと難しい」

 かつて福祉というと「車椅子の予算」「バリアフリー」などが優先され、動物やペットに関しては二の次にされていた時期もあった。しかし現在では、「人間と動物の共存」を福祉の一要素として掲げる自治体が増加している。

 ・犬や猫の避妊手術に補助金を出す
 ・飼い方指導のイベントに予算を捻出する
 ・災害用にペットフードやケージを備蓄する

といった対策を取る自治体は、決して珍しくないのだ。

 高齢化社会が進むにつれて、動物を家族として慈しむ高齢者は増えるだろう。こうした高齢者のためのサポートが、ますます求められるようになっていくのではないだろうか。

Business Journal 2012年12月26日





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