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クマ出没 野生動物と共生の難しさ

クマ出没 野生動物と共生の難しさ(西日本新聞)

 本州各地で連日のようにクマが人里に出没し、多くの人にけがを負わせている。8月末には鳥取県の柿畑でクマに襲われた男性が死亡した。

 九州に野生のクマはいないが、人ごとではない。先日は山形県の中学校校舎にクマが侵入し校務員にけがを負わせた。幸い、生徒たちの登校前で大きな混乱にはならなかったが、相次ぐクマの出没に住民は不安を募らせている。

 これらのクマはツキノワグマで、サケなどを捕食する北海道のヒグマと違い、雑食性のおとなしいクマだ。臆病(おくびょう)な性格で人と出くわしても、普通はクマの方からむやみに向かってきたりはしない。

 ふだんは奥山にすみ、この時期は主にドングリなど木の実を食べて暮らしている。そのクマが、なぜ今年は頻繁に人里に下りてくるのか。

 さまざまな説があるが、春先の低温と夏の猛暑で奥山のドングリ類が不作となったことが主な原因ではないかというのが、大方の専門家の見方のようだ。

 猛暑と台風が繰り返し列島を直撃し、木の実が壊滅的な凶作となった2004年や06年も、果樹や人家の生ごみなどを求めて人里に現れたクマに人が襲われる被害が相次いだ。今年は既にそれを上回る80件以上の被害が報告されている。

 しかし、クマがこれほど頻繁に人里に現れるのは、やはり尋常ではない。天候など自然現象によるエサ不足だけが原因ではないのではないか。

 木の実が豊かな自然林だった奥山も、何百年もの間に植林などで針葉樹主体の人工林が広がった。クマにとって暮らしやすい生息環境は狭まり、より自然林が残る里山にすみつき始めた可能性があるという専門家の指摘は多い。

 そのクマが里山近くで人間がつくる果樹などを狙って、人里に現れては人間社会と摩擦を起こしているというのだ。

 大勢の人にかみついてけがをさせた静岡県のサルや、食害が問題となっているシカについても同じことが言える。

 そうだとすれば、私たち人間の側も野生動物の「生息前線」が人里近くまで延びてきたことを現実として受け止め、どうすれば共生していけるかを真剣に考える必要があろう

 クマやサルが人里に下りてこないようにするための即効性ある妙案があるわけではない。無理に見つけようとすれば、生態系の微妙なバランスを崩してしまうことにもなりかねない。

 時間はかかるが、やはり奥山の自然が回復して野生動物と人間が平和的にすみ分けられる環境が戻るよう、息の長い取り組みを重ねていくしかあるまい。

 飢えに苦しんで、やむにやまれず人里に下りてきて食べ物を探すクマは、恐怖心から人を襲い、傷つける。

 銃による駆除もやむを得ないが、人間の目には奇異で凶暴に映るクマの行動から、私たちは野生動物との共生の難しさを学び直すときかもしれない。

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