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生態系保全、企業も本腰 消費者の目や資源枯渇を意識 /マダガスカル

asahi.com 2010年9月21日
 
 いろいろな生物がかかわり合う生態系全体(生物多様性)を保全するための取り組みが、企業に広がっている。生態系破壊に消費者の目が厳しくなる一方、生物資源が枯渇すれば事業存続も難しくなるからだ。生物多様性条約の第10回締約国会議(国連地球生きもの会議=COP10)が10月に名古屋市で開かれることも、生態系に配慮した経営戦略づくりを後押ししている。

 アフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶマダガスカルは希少な生物の宝庫といわれる。この島の東部のアンバトビー地区。住友商事がカナダや韓国の企業と開発中のニッケル鉱山が来年初め、操業する。周縁部と近隣には動植物や森林の保護ゾーンとして、鉱山の11倍もの1万6500ヘクタールが設けられた。「生物多様性オフセット」という試みだ。

■損失超す回復狙う

 生物多様性オフセットは、開発で失われた生態系をほかの場所で保全・復元して「損失」を差し引きゼロにするものだが、ここでは失った以上の「回復」を目指す。チームリーダーの稲葉誠さん(46)は「生態系が豊かな国なので自主的に挑戦した」と語る。

 例えば動物や昆虫が保護ゾーンにうまく移れるように、木を切り倒す方向を厳密に定め、切り倒した後も2日間そのままにする。人手を使って動植物を移すこともある。地元公聴会は300回以上。数千万ドルのコスト増になった。

 稲葉さんは3年前のこの地の視察を忘れられない。傍らの木をふと見上げると、マダガスカル固有のキツネザルの一種、シファカがちょこんと枝に座っていた。「うかつな開発はできないと思った」

 生態系への配慮は、もはや国際企業に欠かせないものとなっている。最近では、ネスレ(スイス)のチョコレートの原料調達を問題にした、環境団体グリーンピースのキャンペーンが話題になった。

 インドネシアの熱帯森林が破壊され、オランウータンが消える――。そう訴えた映像がインターネットを通じて150万回以上視聴された。これを受けてネスレは今年5月、別の環境団体と組み、新たに「責任ある調達に関するガイドライン」を発表した。

■第三者認証広がる

 国内外で「多様性保全」を盛り込んだ原材料調達指針が相次いで発表されているのも、予期せぬ批判にさらされるリスクを避けるためだ。スーパーなどに並ぶ食品や紙製品では、海や森林の生態系を破壊していないことを第三者機関が認証する「エコラベル」制度も広がりつつある。

 食品・医薬品業界は「遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)」の議論の行方に注目する。微生物などから得た遺伝資源を製品開発に利用した場合、利益を原産国にも還元するもので、対象範囲や強制力がどうなるかによって業績は左右される。無断で持ち出すと「バイオパイレシー(生物資源の海賊行為)」と指弾される時代に入ったのだ。

 「すでに枯渇したものが8%、過剰に取られているものが19%、限界ギリギリまで取られているものが52%」。国連食糧農業機関の2007年の推計は、水産資源の危機的な状況を映し出す。02年のCOP6で採択された「10年までに生物多様性の損失速度を顕著に減速させる」という目標とは、ほど遠い実情だ。

 危機感を背景に企業のネットワークも広がり始めた。日本では08年、保全に取り組む「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」が発足。参加は40社を超えた。

 〈生物多様性条約〉 生物の種や生息地を守り、生物資源の持続的な利用、利益の公平な配分を行うための条約。日本を含む192カ国と欧州連合(EU)が締結しているが、米国は入っていない。締約国会議(COP)は2年に1度のペースで開催。COP10では、生物多様性の損失を止めるため2020年までに達成すべき世界目標「名古屋ターゲット」や、遺伝資源利用の国際ルール「名古屋議定書」の採択を目指す。
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